院内処方(院内調剤)への回帰
病院及び診療所で診察を受けた後に薬をもらうとき
病院内の薬局(薬剤部)でもらう院内処方(院内調剤)
と
病院外の薬局でもらう院外処方(院外調剤)
があります。
ある時期、物議をかもしたデータがあります。
出所:厚労省(調剤報酬(調剤技術料)平成29年11月16日 保険局)
※調剤報酬の改定があり現在とは多少金額が異なっております。
一般的な内科での処方の場合、3130円の差額があるというデータがあります。
3割が自己負担の方であれば、1か月で1000円変わってくるという計算になります。
これを高いと考えるかこんなものと考えるかは置いといて、
もし、院内調剤の金額に院外調剤の金額がすり寄るようなことがあれば、
薬局はたちまち潰れてしまうでしょう。
病院、診療所からしてみれば調剤報酬など利益のごくごく一部でしょう。
その反対に薬局においては調剤報酬が全てです。
そして、この調剤の報酬が高すぎるのではないかということはたびたび
取り上げられております。
今年の6月に日本医師会の会長となった中川氏はたびたび
病院は院内処方に回帰するべきだという趣旨の発言を繰り返されております。
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/613778/
院内、院外それぞれのメリットを考えてみましょう。
患者側からのメリット
院内処方:
・安い、移動の手間がない。
・院内で薬剤師もカルテを見ることができるので、情報のやりとりがスムーズである。
院外処方:
・受診しているクリニックが複数ある場合飲み合わせを確認してもらえる。
(Drは忙しいため、重複、禁忌などを確認している時間がない)
・残薬の調整や1包化など薬を飲みやすくしてもらえるサービスが多々ある。
・病院に対しては聞けないことでも薬局へは気軽に相談できる。
これらの価値に1000円払うかは個人の裁量になるでしょう。
経営者(開業医師)側のメリット
院内調剤
・移動や値段の面での患者の集客効果が見込める。
・外部の薬局から文句を言われることがない。(もめ事がない)
院外調剤
・医薬品の在庫を持たなくてもいい。
・好きな時に好きな薬を処方できる。
・調剤のスタッフを雇わなくてよい。
経営のコスト面でいえば、圧倒的に院外調剤が有利なことがわかるでしょう。
(現在の調剤報酬の元では)
院内処方への回帰
しかし、これだけのメリットがあるにも関わらず、
あえて院内調剤で新規開業する診療所や院内調剤に戻す病院があるのも事実です。
そこには、患者の負担を最小限にするという理念や
院内処方にすることで集客が見込めるというメリットがあるという経営的な側面がある
のではないでしょうか。
過去に関西医科大学病院が院内調剤に切り替えたという出来事もございます。
https://www.yakuji.co.jp/entry51707.html
こういったことも踏まえて、今後も薬局叩きは加速していくのではないでしょうか。
さんざん言われていることにもなりますが、この院内処方への回帰という問題から見て
も、これからの薬局には薬を渡すだけではなく、地域での生活を支える取り組みが求め
られるようになっていくのではないでしょう。
薬局薬剤師にも病院薬剤師と違った視点を持った取り組みや能力が必要になると思いま
す。
この点においては、大手チェーンではなく、地域密着の薬局が小回りが利くという点
において、圧倒的に有利であると思います。コスト面においては圧倒的に不利な個人薬
局ですが、個人薬局の方々には是非とも頑張っていただきたいですし、将来開業するこ
とがあればお世話になりたいとも思っております。